
コロナ禍の影響とアフターコロナの課題
令和5年のアンケートでは、コロナ禍がPTA活動に与えた影響についての声も多く寄せられました。
まず大きかったのは、保護者同士のつながりが薄れたことです。行事や集会の縮小・中止により、顔を合わせる機会が減少しました。その結果、「推薦がしづらくなった」「誰がどんな家庭なのか分からないため声をかけにくい」といった悩みが生まれ、役員選出の難しさに直結しています。
次に、PTA活動のノウハウの途絶という問題があります。コロナによって活動が止まった数年間の間に、経験者が卒業してしまい、引き継ぎが途切れました。「どうやって行事を運営していたのか」「以前はどこまで負担を分担していたのか」が分からなくなり、スムーズに再開できない状況が見られます。
さらに今問われているのが、「どこまで戻すか」「何をやめるか」という取捨選択です。コロナ禍で中止された行事や活動を、そのまま再開すべきかどうか。中止しても問題がなかったものは思い切って削減した方がいいのではないか。逆に、失われた交流や学びの機会は再構築すべきではないか。PTAにとっては、活動の意味や必要性を見直す大きな転換点になっています。
アフターコロナの今、求められているのは「元に戻すこと」ではなく、時代に合わせた新しい形のPTA活動を再構築することだといえるでしょう。
学校・地域との関係

アンケートでは、PTAと学校・地域との関わりについても多くの意見が寄せられました。
まず、教員との連携不足を指摘する声がありました。PTAは「保護者と教師の会」であるはずですが、実際には「保護者だけが負担している」「学校側に意見を出しても経営や運営に反映されていない」といった不満が見られます。教師の働き方改革の流れもあり、行事や会議の縮小が進んでいる一方で、保護者側には「自分たちの意見が置き去りにされている」という感覚が残っているようです。
次に論点となっているのが、地域活動や町内会との関わりの是非です。敬老会や地域行事への参加、地域清掃など「PTA活動」と「地域活動」の境界があいまいになっているケースがあり、「学校のための活動に集中すべきではないか」「地域行事にまでPTAを動員する必要があるのか」と疑問を呈する声がありました。その一方で、地域の子どもたちを見守る仕組みとしてPTAが果たす役割を評価する声もあり、方向性については意見が分かれています。
さらに、地域の高齢化が進む中での現実的な課題も挙がりました。町内会や地域団体自体の担い手不足が深刻化しており、PTAも同じように活動縮小を余儀なくされています。「地域の担い手としてのPTA」という期待と、「子どもの保護者としての活動に絞るべき」という声が交錯しており、今後の役割分担をどう整理するかが問われています。
つまり、学校と保護者、地域とPTAの関係性はこれまでの延長では立ち行かなくなっており、どの範囲を担うのか、どのように協力し合うのかを改めて整理することが求められているといえるでしょう。