
PTAを持続可能にするための視点
アンケートに寄せられた声を整理すると、現行の仕組みをそのまま維持するのは難しいことが浮き彫りになっています。では、どのようにすればPTAを持続可能な形にできるのでしょうか。いくつかの方向性が見えてきます。
1. 負担軽減の工夫
まずは、保護者の負担を減らすことが何より重要です。会議や連絡をオンライン化し、物理的に学校へ集まる回数を減らす。活動自体を簡素化し、形式的な行事や必要性の低い業務は思い切って見直す。さらに、特定の役員に過度に負担が集中しないように、必要に応じてボランティア制を導入し、やりたい人・できる人が無理なく参加できる仕組みをつくることが考えられます。
2. 役員選出方法の透明化
次に、役員をどう選ぶかという問題です。曖昧な推薦や人脈頼みでは不満が生じやすくなります。立候補制を基本とし、立候補がなければ公平な抽選制を取り入れるなど、誰もが納得できる選出方法が必要です。また、仕事内容や年間のスケジュールを事前に明示することで、引き受けるハードルを下げる工夫も有効です。
3. PTA活動の意義を伝える
「やらされている」という感覚を払拭するには、活動の意義を明確に伝えることが欠かせません。どの活動が子どもや学校生活にどのように役立っているのかを具体的に示し、活動報告をわかりやすく共有することで、「やる意味がある」と感じてもらえるようになります。結果として、参加への抵抗感が和らぐ可能性があります。
4. 多様な家庭の参加を促す
最後に、参加する顔ぶれの多様化も課題です。男性保護者の参加を促し、「PTAは母親がやるもの」という固定観念を見直す必要があります。また、ひとり親家庭や外国籍家庭など、これまで参加が難しかった家庭にもアクセスできる工夫を取り入れることで、より開かれた組織へと変わることができます。
このように、PTAを持続可能にしていくためには、単に「続けるかやめるか」ではなく、仕組みそのものを時代に合わせて柔軟に再設計することが欠かせません。
まとめ

今回紹介した福島県PTA連合会のアンケート結果(令和5年実施)は、全国の多くのPTAにも共通する課題を浮き彫りにしていました。
第一に、役員のなり手不足が深刻です。とりわけ会長や本部役員は責任の重さから敬遠されやすく、役員選出が毎年の大きな壁となっています。背景には、共働き家庭の増加や活動内容の不透明さ、不公平感があり、単純な制度変更だけでは解決できない構造的な問題が横たわっています。
第二に、活動の負担感が強まっています。平日昼間の会議や奉仕作業は参加のハードルを高くし、「やらされている感」を増幅させています。結果として、一部の保護者に負担が集中し、モチベーション低下や参加意欲の減退につながっています。
第三に、PTAの存在意義そのものが問われています。「時代に合わない」「形骸化している」との否定的な意見がある一方で、「地域と学校をつなぐ大切な場」として継続を望む前向きな声も少なくありません。この二つの見方が共存していること自体が、今のPTAの立ち位置をよく示しています。
また、少子化や加入意識の低下、コロナ禍によるつながりやノウハウの断絶、そして学校や地域との関係性の変化といった社会的背景が、従来の仕組みをさらに難しくしています。
それでも、アンケートの声からは解決の方向性も見えてきます。
- 負担の軽減(オンライン化・活動簡素化・ボランティア制)
- 役員選出の透明化(立候補制や抽選制の導入)
- 活動意義の明確化と共有(成果を可視化し、意味を伝える)
- 多様な家庭の参加促進(父親や外国籍家庭なども含めた開かれた仕組みづくり)
PTAを持続可能にしていくためには、「これまで通り」ではなく、現代のライフスタイルに合わせた柔軟な再設計が求められます。そして何より大切なのは、「子どもたちのために」という本来の目的を忘れず、保護者・学校・地域が無理なく協力できる形を模索していくことです。