
PTA研修会は、全国の小中学校を中心に毎年のように開催されてきました。本来は、役員や保護者が必要な知識や情報を得て、子どもたちの健全な成長を支える活動を円滑に進めるためのものと位置づけられています。講師を招いた講演会や他校との情報交換の場として、意義を持つ側面も確かに存在します。しかし実際に参加する保護者からは、「平日の昼間に行われるため仕事を休まなければならない」「週末は家族の予定もあり時間を割くのが難しい」といった現実的な負担の声が少なくありません。
さらに、研修内容が毎年似通っていたり、直接的にPTA活動に役立たないと感じる人も多く、「ただ出席すること自体が目的化しているのでは」という疑問が広がっています。交通費や参加費がかかる場合もあり、「参加するメリットよりもデメリットのほうが大きい」と感じる保護者も少なくないのです。とりわけ「強制的に参加させられる空気」が一番のストレスとなり、研修会そのものの存在意義を疑問視する声が高まっています。
そもそもPTAは任意加入の団体であり、活動も柔軟であるべきものです。それにもかかわらず、研修会が形式的に続けられている現状は、「本当に必要なのか」という問いを避けては通れません。保護者の率直な声からは、従来型の研修会が時代に合わなくなっている実態が浮かび上がってきます。
PTA研修会の位置づけ
目的:役員や保護者の資質向上、ネットワークづくり
PTA研修会の最大の目的は、保護者や役員の資質を高めることにあります。学校運営や地域活動に関わる上で必要な知識やノウハウを共有し、保護者としての理解を深める場として設定されています。さらに、同じ立場にある人同士がつながることで孤立を防ぎ、相談できる仲間を得られる点も大きな役割です。ネットワークづくりは情報交換だけでなく、行事運営や課題解決においても実際的な助けとなるため、組織全体の基盤強化につながるとされています。
主催:市町村や上部組織(PTA連合会など)
研修会の多くは、学校単位ではなく市町村レベルや県単位のPTA連合会が主催しています。これは、個々の学校では得にくい幅広い情報や事例を共有するためです。行政や教育委員会と連携して開催されることもあり、学校と地域社会をつなぐ意味合いも含まれています。しかし、上部組織が主催するため内容が一律化しやすく、個々の学校や地域の実情に即していないと感じられる場合も少なくありません。この点が「形骸化している」との批判を招く一因ともなっています。
内容:講演会
研修会の中心的なプログラムは、専門家や教育関係者を招いた講演会です。テーマは「子どもの健全育成」「情報モラル」「地域の防災」など幅広く、知識を得る機会として一定の価値があります。ただし実際には、毎年似たテーマが繰り返される、あるいは現実のPTA活動に直結しない抽象的な話に終始する場合もあり、参加者が「時間の浪費」と感じてしまうことも少なくありません。こうした乖離が「必要性への疑問」を生む要因となっています。
内容:意見交換会・スキルアップ研修
講演会以外に、グループワークや意見交換の時間が設けられることもあります。ここでは、各学校の成功事例や課題が共有され、他校の工夫を学べる点は意義深いとされます。また、会計処理や広報紙作成といった実務的なスキルを学ぶ研修も実施される場合があります。しかし参加者の関心や役職によって必要性は異なり、「すでに知っている内容」「自分には直接関係がない内容」が多いと感じる人も少なくありません。こうしたズレが不満の原因となっています。
PTA研修会がいらないと言われる理由

時間的負担:平日開催が多く、仕事や家庭との両立が難しい
PTA研修会は平日に行われることが多く、働く保護者にとっては大きなハードルとなります。仕事を休む必要があったり、子育てや家事の時間を削られるため「負担が大きすぎる」と感じる人も少なくありません。特に共働き家庭やひとり親世帯では、参加が現実的に難しい場合も多いのです。

平日に有給を取ってまで参加する意味が分からない



子どもの習い事や送迎と重なって本当に困る
実益の少なさ:内容が形骸化し、日常の活動に直結しない
研修のテーマは教育や子育てに関するものが多いですが、具体的な活動に役立たないと感じる人も少なくありません。「毎年似た話ばかり」「現場で必要な知識が得られない」という不満は根強く、単なる形式行事として捉えられがちです。実際のPTA運営に直結する実務研修が求められています。



去年と同じ内容で、正直眠くなった



会計や行事運営のノウハウを知りたいのに、それが聞けない
経済的負担:交通費や参加費が発生するケースも
研修会の会場が遠方である場合、交通費や駐車場代などが自己負担になることがあります。場合によっては参加費が必要なケースもあり、「なぜ任意団体の研修に自腹を切らなければならないのか」と疑問を持つ声も。家庭の出費が増える中で、こうした経済的負担が「いらない」と思わせる大きな要因になっています。



片道1時間以上の会場で交通費だけで数千円かかった



PTA会費から出るならまだしも、自腹参加は納得できない
強制感:参加を断りにくく、断ると周囲から白い目で見られる
本来は任意参加であるはずの研修会ですが、実際には「役員だから当然参加すべき」という空気が根強くあります。欠席を申し出ても「やる気がない」と思われたり、他の役員から冷たい視線を向けられることもあり、心理的なプレッシャーは大きいのが現状です。こうした強制感が最も大きなストレスになっています。



断ったら『やる気ないの?』と言われてつらかった



強制じゃないはずなのに、欠席したら陰口を叩かれた
PTA研修会の代わりになる取り組み


PTA研修会に対して「いらない」という声が強まる一方で、「全く学びの機会が不要」というわけではありません。むしろ、形式的で負担の大きい研修会に代わる、より柔軟で実用的な仕組みが求められています。
まず有効なのはICTの活用です。動画配信やオンライン資料の共有を行えば、必要な人が自分の都合に合わせて視聴できます。平日昼間に時間を割く必要がなくなり、家庭や仕事と両立しやすくなります。さらにアーカイブを残すことで、役員の引き継ぎにも役立ちます。
次にボランティア制の導入です。従来のように役員全員が必ず参加するのではなく、関心や余力のある人が参加する仕組みにすれば負担は大きく軽減します。「出たい人が出る」方が参加者のモチベーションも高く、有意義な学びにつながります。
また、実務に直結する研修の導入も効果的です。行事の運営方法や会計処理、広報紙作成など、現場で役立つスキルを学べれば「実益のある研修」として評価されやすくなります。抽象的な講演ではなく、具体的なノウハウ提供が鍵となります。
さらに行政やNPOとの連携も重要です。防災、福祉、地域づくりなど、PTA活動と重なる分野については、外部団体が持つ知見を活用する方が効率的です。既存の仕組みに乗ることで、PTAが単独で無理をする必要がなくなり、活動の幅も広がります。
このように、従来型の研修会を廃止するのではなく、代替的で柔軟な学びの形を整えることで「負担を減らしつつ必要な情報は得られる」体制が実現できるのです。
- ICT活用:動画配信・資料共有で自由な学びを可能に
- ボランティア制:希望者のみ参加し、強制感をなくす
- 実務型研修:会計・イベント運営など具体的スキルを学ぶ
- 行政・NPO連携:外部の知見を活用し効率的に情報を得る
PTA研修会、見直しの必要性
PTA研修会に対して「いらない」との声が強まっている背景には、社会の変化があります。共働き世帯の増加や家庭環境の多様化により、保護者の時間的・経済的余裕は昔に比べて大きく減っています。そんな中で「平日昼間の集合型研修」に一律で参加を求めるやり方は、現代の実情にそぐわないと言わざるを得ません。しかし一方で、保護者同士が学び合い、交流する機会そのものが不要だというわけではありません。実務に役立つ知識や成功事例の共有、他校とのつながりはPTA活動の質を高める可能性を秘めています。
だからこそ、従来型の形を見直す必要があります。たとえばICTを活用し、動画配信や資料共有で学びたい人が自分のタイミングでアクセスできるようにすれば、時間的な負担は大幅に軽減されます。また、ボランティア制を導入し、関心のある人が自発的に参加する形に切り替えれば「強制感」もなくなり、より積極的で意欲的な学びの場へと変わります。さらに、会計や行事運営など実務型の研修を取り入れることで「役立つから参加したい」と思える研修にできるでしょう。
PTAそのものが任意団体である以上、研修会もまた「任意」で「柔軟」であることが前提であるべきです。固定的な形を守るのではなく、時代に合わせて内容や方法を改革することで、「いらない」ではなく「役立つ」研修に変わる可能性が広がっています。
まとめ
PTA研修会はもともと、保護者や役員が知識を深め、互いに交流するための大切な場として始まりました。しかし現実には、平日開催による時間的負担、形骸化した内容、交通費や参加費の経済的負担、さらには断りにくい強制感といった要素が重なり、「いらない」という声が年々強まっています。本来の目的と現状の実態に大きな乖離があるのです。
それでも「学びの場そのもの」を否定する必要はありません。問題なのは形式にとらわれすぎている点です。ICTを取り入れてオンライン学習を可能にしたり、希望者のみが参加する仕組みに改めたりすれば、必要と感じる人はいつでもアクセスでき、不要だと感じる人に無理を強いることもなくなります。さらに、実際の活動に直結する実務型の研修や、行政・NPOとの協働を通じた学びに切り替えれば、PTAの活動を実際に支える「生きた学びの場」として再生することもできます。
今後は、保護者一人ひとりが納得できる形で参加できる研修へと変えていくことが不可欠です。そうすることで、PTA研修会は「いらない」と言われる存在から「必要だから残したい」と思える存在へと変わっていくはずです。





