
2024年度末(2025年3月末)をもって解散することが決まった岡山県PTA連合会は、全国で初めて都道府県レベルのPTA連合会が姿を消すという前例のない出来事となりました。長年にわたり県内の市町村PTAを取りまとめ、全国組織である日本PTA全国協議会(日P)の一員として活動を続けてきましたが、加盟団体の減少や資金的な限界が大きな要因となり、存続を断念するに至りました。会長を務める神田敏和さんは、「途中で空中分解する前に自らの意思で決断したかった」と語り、苦渋の選択であったことを明かしています。
かつては20を超える団体が加盟し、地域の子どもたちや学校教育を支える役割を担ってきた同連合会ですが、近年は岡山市や倉敷市といった大規模自治体が相次いで脱退し、2024年度にはわずか5団体にまで縮小。会費収入の減少により活動の継続が難しくなり、繰越金や積立金を取り崩してやりくりする状況が続いていました。さらに、2026年度に予定されていた中国ブロック大会の準備を引き受けるだけの体制も整わず、「このまま続けても大会の準備中に崩壊しかねない」との危機感が決断を後押ししました。
解散は寂しさを伴いながらも、「組織を守るためではなく、現実に即した形を模索するための一歩」として注目を集めています。
岡山県PTA連合会が解散に至った背景
岡山県PTA連合会は最盛期の2008年に21団体を擁していましたが、2009年に岡山市、2012年に倉敷市が脱退。その後も離脱が相次ぎ、2023年度初には約10団体、さらに2024年度にはわずか5団体にまで減少しました。加盟数の急減は会費収入の低下を招き、活動の継続に必要な資金や人材を確保できなくなり、組織の存続を揺るがす要因となりました。
会員団体が減少する中で、残った団体には一層大きな負担がのしかかりました。会費は上昇し、金銭面だけでなく役員業務や大会運営といった労力面の負担も増加。連合会は繰越金や積立金を切り崩して運営を続けましたが、それも限界に達し、持続的な活動は困難に。負担と資金逼迫の悪循環が、解散を避けられない決断へとつながりました。
岡山県PTA連合会には2026年度、中国ブロック大会の開催担当が予定されていました。しかし、急減した会員団体では準備を担う体制を整えられず、活動の継続中に「空中分解」するリスクが現実味を帯びていました。会長・神田氏は「途中で崩壊する前に決断したかった」と語り、将来的な混乱を回避するため、早期に解散を決断することを重視しました。
本格的な議論が始まったのは2024年3月の総会からでした。当初は「日Pからの脱退にとどめ、県連合会のみを存続させる」案も検討されましたが、会員団体の減少で現実的に不可能と判断されました。一方で、保険制度の開始や中国ブロック大会への協力といった役割を果たす必要があり、年度末までは連合会を存続させる方針を確認。そのうえで、2025年3月末での解散が正式に決まりました。
岡山県PTA連合会・解散決定のプロセス

岡山県PTA連合会で解散の是非が本格的に議論されたのは、2024年3月の総会(2023年度末)からでした。選択肢の一つとして「日本PTA全国協議会(日P)から脱退し、県連合会のみを存続させる」案も検討されましたが、加盟団体が急減していたため実現は困難と判断されました。一方で、4月から始まる保険制度の運用や、中国ブロック大会への協力といった役割は一定期間担う必要があるとの認識から、年度末までは連合会を維持。そのうえで2025年3月末での解散という結論に至りました。
岡山県PTA連合会解散の影響と関係者の反応
上部組織や行政の反応
岡山県PTA連合会の解散に際し、日本PTA全国協議会(日P)から強い引き止めはありませんでした。これは、加盟団体数の急減が続く中で解散が避けられないという現実を、上部組織も受け止めていたことを示しています。岡山県教育委員会も「やむを得ない判断」と理解を示し、今後は市町村単位のPTA活動や研修について、教育委員会が必要な支援を行う方針を表明しました。行政によるフォロー体制が示されたことで、解散後も保護者や学校現場の活動が大きく途絶することはないと見込まれています。
解散後の資金処理
解散後に注目されたのが資金の扱いです。保険制度からの収益は一般会計に繰り入れられ、事務局の家賃や職員の人件費に充てられました。莫大な資産が残っていたわけではなく、積立金や繰越金を切り崩しながら年度末までしのいだのが実情です。最終的には、解散時点で大きな余剰金はなく、資金を適切に使い切る形で幕を下ろしました。この点についても「透明性を持った処理であった」と評価する声が多く、特別なトラブルは報じられていません。
保護者への影響とネットの反応
岡山県PTA連合会の解散は、保護者や関係者に驚きをもって受け止められましたが、SNSやネット上では「旧来型のPTAのあり方に限界が来ていた」とする声が多く、概ね前向きな反応が広がりました。一方で、会長の神田敏和さんは「解散という前例を作ったことで、他県に影響を及ぼすかもしれない」と述べ、解散の波及効果に慎重な姿勢を崩していません。従来の枠組みに縛られない新しい地域活動の形を模索する契機になる一方で、その影響範囲は今後も注視されるべきだと言えるでしょう。
全国への波及と現代のPTAのあり方
岡山県PTA連合会の解散は、単なる一地方組織の問題にとどまらず、全国のPTA関係者に大きな衝撃を与えました。そもそもPTA活動や連合会の存在は、法律で義務づけられたものではなく、あくまで任意の団体として成り立っています。形式的には自由参加であるはずの組織が、長年「当然入るもの」とみなされ、半ば強制的に継続されてきた現実を振り返れば、今回の解散はその根本を問い直す出来事とも言えるでしょう。
解散によって直ちにPTA活動が消滅するわけではなく、市町村レベルや学校単位での取り組みは今後も継続されます。むしろ、より地域や現場に近いところで、子どもたちや保護者の実情に即した活動を再構築する契機になるとの見方も強まっています。例えば、従来のように上部組織からの一律の要請に追われるのではなく、学校や地域が本当に必要とする支援や交流に重点を置くことで、保護者の負担軽減や活動のスリム化につながる可能性があります。
一方で、今回の事例が「解散できる」という前例を示したことは、他県の連合会にも波及する可能性を秘めています。会員減少や資金難といった課題は全国共通であり、同様の理由から組織の存続が困難になる地域が出てくることは十分想定されます。岡山県の選択が「特殊な事情による例外」なのか、それとも全国的な潮流の先駆けとなるのかは、今後の動きを注視する必要があります。
今回の解散劇は、PTAが「伝統だから続けるもの」ではなく、「地域や保護者が必要と感じる形で運営すべきもの」であることを改めて示しました。今後は、強制ではなく任意、上意下達ではなく現場主導という原点に立ち返り、より柔軟で参加しやすいPTAの形を模索することが重要です。岡山県の事例は、その議論を全国に広げるきっかけとなるでしょう。
まとめ
2025年3月末に解散した岡山県PTA連合会は、全国で初めて都道府県レベルのPTA組織が姿を消す事例となりました。加盟団体は2008年の21団体から年々減少し、2024年度にはわずか5団体に。会費収入の減少により運営が困難となり、残った団体には金銭的・労力的な負担が重くのしかかりました。さらに、2026年度に予定されていた中国ブロック大会の準備を担う体制も整わず、活動の途中で「空中分解」する前に解散を選んだと会長は説明しています。
日Pからの引き止めはなく、岡山県教育委員会も「やむを得ない」と理解を示し、市町村単位の研修などは教育委員会が引き継ぐ意向を示しました。解散に際し、大きな資産は残らず、積立金を切り崩して年度末まで運営を継続。ネット上では旧来型PTAのあり方に疑問を呈する声が多く、前向きな評価も広がっています。
今回の決断は、PTAが任意団体であることを再確認させ、今後は地域や学校単位での活動を見直す契機となりそうです。他県でも同様の動きが広がる可能性があり、全国的にPTAの存在意義や役割が再考される局面を迎えています。
- PTAは任意加入であることを再確認する
「入らなければならない」という思い込みを見直し、家庭の事情に応じた関わり方を選びましょう。 - 活動のスリム化を意識する
行事や役割を精査し、本当に必要なものに絞り込むことで、参加しやすいPTA運営を目指しましょう。 - 地域や学校単位で柔軟に取り組む
上部組織に縛られるのではなく、地域や学校の実情に合った活動を優先することが大切です。 - ICTや外部リソースを活用する
書面や会議に頼らず、オンラインツールや外部サービスを使うことで負担を減らし、効率的に活動できます。 - 持続可能な形を模索する
解散は終わりではなく、新しい始まり。現代に合った「誰もが無理なく参加できるPTA」の形を考えていきましょう。