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くじも立候補も推薦も…公平・柔軟なPTA会長の選び方まとめ

くじも立候補も推薦も…公平・柔軟なPTA会長の選び方まとめ

PTA会長をどうやって決めるか。これは毎年多くの学校で繰り返される、頭の痛いテーマです。役員の中でも特に責任が大きく、時間や労力の負担も重い立場であるため、「自分からやりたい」と立候補する人は決して多くありません。その一方で、誰かが担わなければ活動は回らないため、結果的に「押し付け合い」になってしまったり、「仕方なく引き受ける」人が出たりするのが現実です。

私自身もその一人でした。シングルファーザーとして子育てをしているなかで、何となくPTA役員を引き受けることになり、気づけば6年間続け、そのうちの2年間は会長を務めました。男親であることや自営業だったこともあってか、周囲からは「PTA会長をやってくれませんか?」と半ば当然のように頼まれ、断り切れずに引き受けたのです。こうした経緯からもわかるように、PTA会長の選出には不透明な部分や、個人の事情が十分に考慮されない現実があります。

公平さを重んじて「くじ引き」で決める学校もありますが、事情を抱えた人に当たってしまったり、やりたくない人が引き当ててしまったりすると不満が残ります。推薦制にしても裏での根回しや断りづらさが課題になり、輪番制なら順番が来た人の負担感が大きいなど、それぞれに短所があるのです。

そこで今回は、代表的な会長選出のパターンを整理し、それぞれのメリットとデメリットを解説します。そのうえで、学校や地域の事情に合わせた柔軟な運用方法や、参加者全員が納得しやすい公平な仕組みづくりのヒントを紹介していきます。

目次

PTA会長の決め方パターン

立候補制

立候補制はもっともシンプルで民主的な方法です。「自分がやりたい」という意思を持った人が名乗りを上げるため、やる気のある人材が会長になるケースが多く、活動全体が前向きに進みやすいという利点があります。とくに学校改革やイベント運営に積極的な人が立候補することで、PTA全体の雰囲気が明るくなることもあります。

一方で、立候補者が出ない年は大きな問題となります。「忙しいから」「責任が重いから」と敬遠されやすく、結局は沈黙が続き、気まずい空気が流れる場面を経験した人も多いでしょう。私自身も会長を務めた際、「もし立候補者がいなければ、結局誰かが無理にでもやることになる」という暗黙の圧力を感じました。さらに、毎回同じような顔ぶれが立候補することもあり、「限られた人に負担が集中する」という不公平感が生まれるリスクもあります。

つまり立候補制は、意欲的な人材を見つけやすい一方で、候補がゼロの場合や、特定の人に偏るという課題を抱えています。そのため、他の方法との組み合わせや「立候補を促す仕組みづくり」が必要となるのです。

立候補制のメリットとデメリット
  • メリット
    やる気のある人が自ら手を挙げるため、活動が前向きに進みやすい。責任感の強い人材が会長となるケースが多く、周囲からも納得を得やすい。
  • デメリット
    立候補者が出ない場合に会が停滞する恐れがある。特定の人に負担が集中したり、毎年同じ人が続けて務めるなど不公平感が生まれやすい。

推薦制

推薦制は、周囲から「この人が適任だ」と思われる人を選び出す方法です。推薦を受けること自体は信頼の証ともいえるため、候補者が承諾すれば適材適所の人材が会長に就く可能性が高くなります。また、自分からは立候補しないタイプの人でも、推薦されることで新しい役割に挑戦するきっかけになることもあります。

しかし、現実には「断りづらさ」が大きな問題です。推薦された人が辞退しようとすると、「せっかくみんなが推してくれたのに…」という空気が流れ、心理的に強いプレッシャーを感じることになります。私が会長を務めたときも、「周囲からの推薦があったから」という理由で承諾せざるを得なかった人を見てきました。本人の事情や負担を無視した形で推薦が進むと、不満やトラブルの原因になりかねません。

さらに、推薦が事実上の「根回し」や「押し付け」になってしまうケースもあります。表向きは推薦制でも、実態は「役員の間で事前に決められていた」という声も少なくありません。つまり推薦制は、一見すると民主的ですが、裏での力関係や人間関係のしがらみが色濃く反映されやすい方法でもあるのです。

推薦制のメリットとデメリット
  • メリット
    周囲から「適任」と認められた人が選ばれるため、人材を発掘しやすい。本人が自ら立候補しない場合でも新しい役割を担う機会になる。
  • デメリット
    推薦を断りにくく、心理的な圧力が大きい。実質的に押し付けや根回しに近い形になることもあり、不満や人間関係のしこりを残しやすい。

くじ引き(抽選制)

公平性を重んじる方法としてよく導入されるのが「くじ引き」です。くじによる抽選は誰にでも平等にチャンスがあり、忖度や偏りをなくすことができます。そのため「誰も文句が言えない方法」として受け入れられやすい側面があります。

実際、私の周囲でも「結局はくじで決めた」という学校の話をよく聞きます。緊張感のある会議の場で、抽選箱から番号を引く瞬間の独特な空気を経験した人も多いでしょう。公平性を優先するなら、もっともシンプルで透明な方法といえます。

しかし、くじ引きには落とし穴があります。例えば、家庭や仕事の事情でどうしても会長を務められない人に当たりくじが回ってしまう場合です。「公平」とはいえ、その人にとっては大きな負担であり、不満やトラブルの火種になります。また「運任せで決めるなんて無責任」という批判も根強く、くじ引きが原因でPTA活動全体へのモチベーションが下がることもあります。

公平性の高さは魅力ですが、事情を抱える人への配慮を欠くと逆に不公平になる――これがくじ引きの難しさです。

くじ引きのメリットとデメリット
  • メリット
    誰にでも平等にチャンスがあり、忖度や偏りを防げる。決定方法がシンプルで透明性が高く、表向きは「最も公平」と受け止められやすい。
  • デメリット
    事情を抱える人が当選すると不満やトラブルの原因になる。単なる運任せの印象が強く、活動へのモチベーション低下を招く恐れがある。

輪番制

輪番制は、役員の順番が自動的に回ってきて、その年に当たった人が会長を務めるという仕組みです。あらかじめ順番が決まっているため、透明性が高く、「誰がやるか」で揉めることは少なくなります。公平感があり、長期的に見れば全員が同じように負担を分かち合うことができるという点で、システムとしては非常にシンプルです。

しかし、輪番制もまた現実には課題を抱えています。たとえば、順番が回ってきた年にちょうど家庭や仕事で大きな事情を抱えていた場合でも、基本的には逃れられません。そのため「不公平感は少ないけれど、柔軟性に欠ける」という声が多く聞かれます。私自身も、ある年度で「順番だから仕方ない」と引き受けざるを得なかった人が疲弊していく姿を目の当たりにしました。

また、輪番制は「誰が会長になるか」を事前に予測できる分、次に当たる人が憂鬱な気持ちで過ごすことにもつながります。公平でありながらも、負担感や精神的なプレッシャーを先延ばしにしているだけ、という側面も否めません。

輪番制のメリットとデメリット
  • メリット
    順番があらかじめ決まっているため透明性が高く、平等に負担を分担できる。誰が次に会長になるか予測でき、事前準備もしやすい。
  • デメリット
    順番が回ってきた時期に事情を抱えていても辞退しにくい。公平さはあるが柔軟性に欠け、精神的な負担を先送りする面がある。

投票制(無記名投票など)

投票制は「民主的な選挙方式」として取り入れられることがあります。候補者をリストアップし、無記名投票で多数決をとる方法は一見もっとも公正に見え、選ばれた人への納得感も得られやすいといえます。

ただし、学校や地域によっては投票制が「人気投票」に近くなってしまうこともあります。人柄や知名度で票が集まるため、必ずしも適任とは限らず、選ばれた人が大きな負担を感じるケースもあります。さらに、得票数が少なかった候補者が肩身の狭い思いをしたり、投票結果が人間関係のしこりを残したりするリスクも無視できません。

また、投票制を導入するには候補者を事前に立てる必要があり、その時点で「誰が候補になるのか」をめぐって混乱やトラブルが生じやすくなります。現実的には、立候補制や推薦制と組み合わせて使われることが多いのが実情です。

投票はもっとも「民主的な方法」と言えますが、運営の手間や人間関係への影響を考えると、必ずしも万能ではないのです。

投票制のメリットとデメリット
  • メリット
    民主的な多数決方式で決められるため、決定に納得感が生まれやすい。候補者への支持が可視化され、運営の透明性を高める効果がある。
  • デメリット
    人気投票になりがちで、必ずしも適任が選ばれるとは限らない。得票差が人間関係に影響を及ぼし、候補者に心理的負担を与える。

PTA会長の選出方法ごとの課題と現場の声

PTA

「会長選出の会議が深夜までかかった」事例

立候補や推薦で決めようとすると、なかなか候補者が出ず会議が長引くことがあります。ある学校では

誰も立候補しないので話し合いを続けた結果、夜10時を過ぎても決まらず、結局深夜近くまでかかった

という声がありました。役員同士が気まずい沈黙を繰り返す中で、最終的には「仕方なく」承諾する人が出て決着するケースも少なくありません。こうした長時間の話し合いは、役員の負担感を増大させるとともに、「なぜ毎年同じことを繰り返すのか」という不満につながっています。

「くじで当たってしまい、事情があっても断れなかった」事例

公平さを重視してくじ引きを採用する学校もありますが、そこには落とし穴があります。ある保護者は

シングルで仕事が忙しく、とても会長は務まらないと思ったのに、くじで当たりを引いてしまった。事情を話しても『公平だから』と押し切られた

と語っています。確かにくじは透明で不満を言いにくい仕組みですが、個々の事情を考慮できないため、当事者には大きな負担となります。結果的にその人が疲弊し、活動自体が停滞してしまうリスクをはらんでいるのです。

「推薦で押し切られた」経験談

推薦制は適任者を見つけやすい反面、「断れない雰囲気」が問題になりがちです。ある体験談では

会議で何人かから名前を挙げられ、みんなが拍手する中で『やります』と言わざるを得なかった

と振り返っています。本来は信頼の証であるはずの推薦が、実態としては半ば強制になってしまうのです。特に人間関係の濃い地域や小規模校では、推薦が押し付けや根回しと受け取られやすく、本人に強い心理的負担を与えることもあります。

「立候補制にしたら毎回同じ人に頼る形になった」ケース

民主的に見える立候補制にも落とし穴があります。ある学校では

立候補制にしたら、結局いつも同じ顔ぶれが立候補し、特定の家庭に負担が集中してしまった

という声がありました。熱心な人にとってはやりがいがあるかもしれませんが、「結局あの人に頼めばいい」という空気ができてしまうと、制度としての公平性が失われます。こうした偏りは「やらない人」と「やる人」との間に温度差を生み、PTA活動全体のモチベーション低下を招く危険性があります。

PTA会長選び~公平で柔軟な仕組みづくりの工夫

小学生

事前アンケートで立候補・推薦の意向や事情を把握する

いきなり会議の場で候補者を募ると沈黙が続き、時間ばかり過ぎてしまいます。そこで有効なのが、事前アンケートです。「立候補の有無」や「推薦したい人」、さらに「どうしても会長を務められない事情」を事前に確認しておくことで、会議の場での混乱を大幅に減らせます。透明性を高めつつ、配慮が必要な人を守れる点で公平性も確保できます。

複数人での会長制(ツイン体制や役割分担)を導入する

会長を一人に集中させるのではなく、複数人体制にする方法も有効です。例えば「ツイン会長」として2人で分担すれば、負担が半減し心理的なハードルも下がります。また、「広報担当会長」「行事担当会長」と役割を分ける工夫もできます。責任の分散は、継続的な活動と参加のしやすさを両立させる大きなポイントです。

任期を短縮(1年→半年や分担制)して負担を減らす

多くの学校では1年間の任期が一般的ですが、これを半年や分担制にすることで大きく負担が軽くなります。「短期ならやってもいい」という人は意外と多く、候補者の幅が広がります。任期を柔軟に設計することは、会長選出のハードルを下げるだけでなく、組織の活性化にもつながります。

「できる人が、できることを」の方針(柔軟な役割分担)

PTA活動全体を見直し、「会長だから全てを背負う」という考え方をやめることも重要です。行事運営や行政とのやり取りなど、会長の役割を細かく分担し、それぞれが「できる範囲」で協力するスタイルに変えることで、無理のない参加が可能になります。責任を一人に集中させないことが、持続可能な運営につながります。

ICT活用で仕事の負担を軽くする

書類作成や連絡業務に時間を取られるのは大きな負担です。これを解決するのがICTの活用です。LINEオープンチャットやメール配信、クラウドでの資料共有などを取り入れれば、会長の業務は大幅に軽減されます。特にコロナ禍以降はオンライン化が進み、会議や打ち合わせを効率化する事例も増えています。デジタルの力を活用することは、公平で柔軟な仕組みづくりに直結します。

まとめ:公平で持続可能なPTA会長選出のために

PTA会長の選出方法には、立候補・推薦・くじ引き・輪番制・投票制といった複数の仕組みが存在します。それぞれにメリットはあるものの、同時に課題や不満の声も避けられません。「公平だから」といってくじに頼れば事情を抱えた人が苦しむこともあり、「推薦だから」といっても断れない空気に押されるケースもあります。立候補制は前向きに見える一方で人材が限られ、輪番制は透明性が高いものの柔軟性に欠ける、といったように万能な方法は存在しないのです。

だからこそ求められるのは、「公平性」と「柔軟性」の両立です。事前アンケートで立候補や事情を把握する工夫は、候補者の不安を和らげます。会長を一人にせず複数人体制で分担する仕組みは、責任を分散し心理的負担を軽くします。さらに任期の短縮や役割分担の柔軟化は「自分にもできるかもしれない」という意識を広げるきっかけになります。そしてICTの活用は、情報伝達や事務作業を効率化し、誰もが参加しやすい環境づくりを支えます。

私自身、役員を6年、会長を2年務めた経験から感じたのは、「結局は人の善意や我慢に頼る仕組みでは長続きしない」ということです。持続可能なPTAのためには、会長選出の方法を「誰かが犠牲になる仕組み」から「みんなで支え合う仕組み」へと転換していく必要があります。学校や地域によって事情は異なりますが、大切なのは「できる人が、できることを」という視点を共有すること。そして透明性を確保しつつ柔軟に対応できる制度設計を進めることです。

PTA会長をめぐる悩みは、どの地域でも共通しています。だからこそ、多様な方法の中から自分たちの学校に合った形を模索し、参加者全員が納得できる仕組みをつくることが、次世代へ安心してバトンを渡すために欠かせないのです。

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